司法修習生の就職活動はタイミングが非常に重要です。就職活動がいつから始まるかを知っておくことは有利に就職活動を進めるポイントです。
就職活動のスケジュールは、司法試験や司法修習の日程とも大きく関連しています。ここでは、司法試験直後、合格発表直後、司法修習開始後と言った流れに沿って司法修習生の就職活動スケジュールを解説します。
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業
Contents
1. 司法試験直後:6月1日~四大法律事務所など
四大法律事務所を始めとした成績優秀者層をターゲットとした法律事務所では、司法試験直後から就職活動を開始します。
基本的に予備試験合格者や上位ロースクールの成績上位層をターゲットとしているため、司法試験に合格することを見越しています。
なお、万が一司法試験に落ちた場合の対応ですが、事務所によっては次年度の司法試験合格まで待ってくれることもあるようです。
四大法律事務所などに対する就職活動は、正直ほとんどが学歴+成績で決まってしまうのが実態だと思われます。
とくに近年は採用数を増やしているため面接で多少難があっても成績が良ければ採用の対象になるとの噂もあります。
他方で、学歴・成績が足りずに書類審査の時点で落とされると挽回ができません。従って、ある意味では非常に分かり易い就職活動であると言えるかもしれません。
四大法律事務所の就職活動は、概ね6月一杯ぐらいで内定が出揃っており、遅くとも7月頭頃には大勢が決するようです。
四大法律事務所の内定を持っている方はおめでとうございます。四大法律事務所の内定者は修習同期に比べて時間的に余裕が生まれます。四大法律事務所の内定自体も有利なポジションですが、他方で四大法律事務所の若手弁護士を中心にキャリアが多様化していると感じます。四大法律事務所の内定を得ることは、ある程度の信頼と何より時間があることを活かして、色々なキャリアプランを見すえて見聞を広めることをおすすめします。
2. 合格発表まで:7月~秋頃にかけて
2.-(1) 事務所説明会の実施
合格発表前の段階で一部の法律事務所は事務所説明会などを開催しているようです。
事務所説明会は、弁護士事務所の業務を知るとともに今後の就職活動に繋がるイベントであり、興味の有無に関わらず積極的に参加した方が良いと思います。
司法修習生との面接でお話をすると働くことの具体的なイメージを持てていないと感じることが少なくありません。
事務所説明会に積極的に参加することによって、弁護士として働くことのイメージを持つきっかけになるのではないかと思います。
2.-(2) 大阪四大法律事務所:サマークラークの実施
いわゆる大阪四大法律事務所などは司法試験受験が終わった後の夏休みにサマークラークを実施しています。
サマークラークは、大阪の大規模法律事務所がどのような業務を行い、どのように働いているのかを知る貴重な機会です。
私は、東京・大阪の大規模法律事務所のサマークラークに参加しましたが、東京と大阪の違いも分かって非常に興味深い経験でした。
3. 合格発表から司法修習開始まで
司法修習生の就職活動は、合格発表直後から司法修習開始までの期間にピークを迎えます。
弁護士事務所側としては計画に基づいて一定人数を採用するためにできるだけ早く動きたいという考えがありますし、司法修習生側も修習に専念するために修習開始前までに就職活動を終えたいと考えるようです。
3.-(1) 合同就職説明会
司法試験の合格発表後には各地で合同就職説明会が開催されます。
私たちも、毎年東京三会合同就職説明会に参加していますが、多数の弁護士事務所・企業が参加しており見比べるだけでも非常に興味深いです。
東京三回合同就職説明会は午前から夕方頃まで行われますが、全てのブースを回ることはほぼ不可能です。
事前にパンフレットやホームページで情報収集を行って、興味がある弁護士事務所・企業を絞り込んで参加することをおすすめします。
3.-(2) 内定の取得時期について
面接時にお話を聞くとほとんどの司法修習生は5~10個程度の法律事務所に書類を提出し、3~4個ぐらい面接を同時並行で進めている印象です。
また、内定の取得時期もどんどん早くなっており、司法修習の開始前や少なくとも年内一杯には内定を確保しておきたいと考える司法修習生が多いようです。
検察官・裁判官志望や他法律事務所に内定替えをする方がいるため、採用側からするとどの程度内定を出すべきかの予測が難しい点があります。
内定受諾後に一方的に内定を破棄されると法律事務所側として非常に困ります。検察官・裁判官志望の気持ちもある場合はせめてその旨を留保して内定受諾するようにして欲しいというのが率直なところです。
4. 司法修習開始後の就職活動
4.-(1) ひまわり求人を中心とした就職活動
司法修習開始後になって就職活動を行う人も居るようです。
司法修習開始前は積極的に情報を集めないと情報が回ってこないため、のんびり構えていたところ司法修習で就職状況を知って動きだす方が多いようです。
司法修習が開始した後の就職活動は、ひまわり求人を見て個別の事務所訪問を行うことが基本かと思います。
大手弁護士法人などは毎月1~2回程度の事務所説明会を開催しているところもあるようです。
もっとも、最近は司法修習生の就職活動時期が前倒しになっていることから、司法修習開始後の就職活動は散発的な印象があります。
逆に言うと、この時期でも採用活動を行っている弁護士事務所は求人意欲が高いと言えるため狙い目かもしれません。
(参考)なお、一般民事系の法律事務所は2月頃からひまわり求人などで募集を開始するようです。本格的に就活に力を入れる司法修習生もいるようなので、ライバルに差をつけられないように注意した方が良いかもしれません。
司法修習生は「2月から街弁の募集が開始する」と共通認識しているようです。
2月中旬頃から就活している司法修習生が少しだけど増えている感じがします。法律事務所側としてはは応募が多いうちに選考を行って内定者を確保したい。
2月中旬~下旬は頑張りどきかもしれない#司法修習生の就職活動— 弁護士×就活Blog -Ginza library- (@GinzaLibrary) February 22, 2019
4.-(2) 司法修習後半における再度の求人募集
司法修習後半になると内定破棄者が出るため求人を再開する弁護士事務所もあります。
とくに司法修習中に任官・任検に志望を変更して内定を破棄するケースは私たちの実体験としても少なくありません。内定受諾時には任官・任検の見込みは分からないため事後的に事情変更があるのでやむを得ない面があります。
任官・任検の見込みは8月頃には分かりますが、二回試験終了して確実に任官・任検が決まるまでは念のため内定を保持する方もいるようです。従って、任官・任検による内定破棄のため再度求人を募集する必要があり、8月頃から11月頃までぽつぽつ求人情報が再掲される場合もあります。
実体験からも任官・任検に行く内定辞退者があるため、修習後半の8月頃から10月頃から再度求人が出ることもあることも影響しているかもしれません
他方で、地方修習でありながら東京や大阪に就職活動に通うのは時間的・金銭的に大きな負担です
修習配属前には内定を得ておくことをおすすめします!— Ginza library-弁護士坂尾陽公式ブログ- (@GinzaLibrary) September 15, 2019
内定を受諾した後に断る内定破棄は弁護士事務所に大きな迷惑がかかります。
任官・任検はやむを得ないですが、内定受諾後に他の法律事務所に鞍替えをして内定を破棄することは非常に印象が悪いです(弁護士の登録状況を調べればすぐに分かります。)。
とくに採用人数1名の小規模な弁護士事務所で内定破棄をされると1年間の事業計画が大きく狂う程の致命的なダメージを与えます。
将来のレピュテーションリスク等を考慮したときは、内定受諾後に内定破棄をすることは原則としてやめましょう。もし内定破棄を万が一するときは任官・任検の可能性があるなら早期に連絡する等の慎重な配慮をすることをおすすめします。
4.-(3) 早期離職者がでた場合の弁護士事務所
入所したは良いもののイメージと違ったなどの理由で入所1~2か月で辞める新人弁護士も少なくありません。
面接時に話を聞く限りでは、弁護士事務所側に原因があることも、新人弁護士側に原因があると思われることも、単に相性が悪かっただけと思われることもあるようです。
このように早期離職者が出た弁護士事務所は、司法修習開始後の1~2か月ぐらいに採用活動をスタートするケースもあるようです。
このような弁護士事務所は、本当に人手不足で困っている可能性があるため、内定を得やすいかもしれません。
内定受諾後の破棄に次いで早期離職も弁護士事務所側にとっては大きな打撃です。
また、司法修習生側にとっても早期退職の経歴が残ることはプラスにはならないはずです。入所前に事務所の雰囲気を確認したりするなどして十分情報収集をすることをおすすめします。
5. まとめ
本記事は司法修習生の就職活動の開始時期やスケジュールを簡単に説明しました。
四大法律事務所などの司法試験の合格発表前に就職活動が終わる例外を除き、基本は司法試験合格発表後から司法修習開始までが勝負になります。
合同就職説明会は、法律事務所・司法修習生の双方が気合を入れて参加するイベントです。ただし、時間の関係で全てを回ることは難しいと思われますので、予めホームページなどで興味がある法律事務所を下調べすることが重要になるでしょう。