一般民事案件と企業法務案件の違いについて

私は、元々四大法律事務所でM&A・組織再編案件を主に担当していました。現在、私たちは一般民事事件と企業法務案件をいずれも取り扱っている総合型法律事務所を目指していますが、現状は街弁よりです。

本記事では、企業法務案件も一般民事案件も両方扱ったことがある立場から、一般民事案件と企業法務案件の違いを考えてみます。

 

一般民事案件と企業法務案件は扱う法分野が違うことはもちろんですが、その他にも以下のように様々な違いがあります。とくに一番異なる点はスピード感だと考えています。

  • スピード感
  • 過程(根拠)
  • 結論の即時性
  • 顧客層
  • 報酬面

 

司法修習生や若手弁護士の方で、一般民事事件と企業法務案件のいずれも取扱いと考えておられる方は是非この違いを踏まえて業務に取り組んでいただければと思います。

※企業法務案件を第一線で取り扱っている弁護士の方は当たり前すぎる内容だと思うのでとくにお読みいただく必要はありません。

 

とくにスピード感に関しては、最初の段階で企業法務案件のペースに慣れるべきだと考えています。最初に一般民事案件のペースに慣れると、後々に企業法務案件に取り組みたいときに辛い思いをする(場合によっては取り組めない)ので注意してください。

 

弁護士や司法修習生の皆様が私たちと働きたいと思われたなら、若手弁護士の働き方の特設ページをご覧ください。就職活動・転職活動をしている弁護士・司法修習生の皆様の参考になる情報を記載しています。

 

 

 

 

1.     スピード感の違い

 

一般民事案件に比べて圧倒的に企業法務案件の方がスピード感を要求されます。とくに顧客に対しては可能であれば1時間以内(※現実には結構難しい)、少なくとも当日中には何らかのレスポンスをするように心がける必要があると思います。

 

1.-(1)  一般民事案件:案件単位1~2年、アクション単位1か月

 

一般民事案件は交渉・裁判と続けば解決まで1~2年単位の期間を要することは珍しくありません。また、概ね1か月単位で期日が設定されるため、書面作成・打ち合わせも1か月単位の期間があります。

 

依頼者対応に関しては、一般民事案件は様々な顧客と接するため、性格や人柄を考慮して対応する必要があります。しかし、一般民事案件では(私は良いことだと思っていませんが)「弁護士は先生である」前提で関係が構築されています。

そのため、例えばメール等で質問をされたときに当日中に必ず返事をしなくて良いケースもあるかもしれません。概ね1~2日以内に対応をしていれば問題にならないことが多いように思われます。

 

1.-(2)  企業法務案件:案件単位1週間~数か月、レスポンス・1時間以内

 

これに対し、企業法務案件は簡単なリサーチだと長くても1週間程度、少々大規模なM&A案件でも数か月単位で終了します。企業法務案件で期間やスケジュールを考えるときは、事業年度(及び当該年度の予算)があることを意識しておくと納得できることが多いでしょう。

 

そして、依頼者対応に関しては、基本的に1時間以内に何らかの返答をすることが原則だと考えておく必要があります。1時間以内は何かしらのアンケート調査で見た記憶がありますが、基本的にビジネスマンは1時間以内に返事が来ないとイライラするという結果でした。

 

もっとも、1時間以内に質問に対する法的助言を行うことまで求められているわけではありません。以下の点をとりあえず(少なくともメールを受信したので検討する旨)だけでも速やかに回答するようにしましょう。もっとも、これだけの返信でも1時間以内に必ず返信しようと思ったら相当の努力を要しますが…でも、遅くとも当日中には反応がないとまずいでしょうね。

  • メールを受信した旨
  • いつ頃まで回答できそうかの見込み(概ね2~3営業日以内)

 

回答期限は顧客側で区切っていれば問題ありませんが、メールによる相談内容であれば概ね2~3営業日日以内が回答の目安期限だと考えた方が無難です。回答まで1週間を過ぎれば(やや)遅い、2週間を過ぎたらアウトでしょう。

 

2.     過程(根拠)の違い

 

2.-(1)  一般民事案件:あまり過程は問われない

 

一般民事案件で過程を問われることは少ないと思います。書記官や裁判所に問い合わせた結果であろうとも、匿名のブログに書いてあったことであろうとも、結果的に正しければ基本的に問題になることは少ないでしょう。

 

2.-(2)  企業法務案件:過程(根拠)が重要

 

これに対して、企業法務案件のリサーチでは過程(根拠)が非常に重要です。同じ結論に辿り着いたとしても、正解となる根拠(引用文献)を見つける必要があります。

仮に同じ結論を導いたとしても、根拠(引用文献)でより信頼性の高いものを見落としていたら失格だという意識を強くもつ必要があります。

 

この点は、企業法務案件は決裁者が複数いるため、多くの決裁者を納得させ得る根拠が必要なためかと思われます。

 

例えば、取締役の利益相反取引該当性について調べると、様々な弁護士、場合によっては司法書士、会計士などのブログで簡単に答えが見つかります。しかし、そのまま回答できるわけではありません。なぜなら原則としてブログは根拠足り得ないからです。

 

同じ結論であっても、例えば江頭憲治郎著「会社法」や「会社法コンメンタール」に記載があれば、そちらを引用していなければプロダクトとして誤りだということになります。

正しい回答を導くだけではなく、権威がある文献を必ず調査する必要がある点は企業法務案件を取り扱う上で常に意識しましょう。

 

3.     結論の即時性

 

この点は私個人の見解ですが、結論が即座に明らかになる一般民事案件の方が結論に対するプレッシャーは大きいように感じます。もっとも、企業法務案件は結論の重大性が比較にならないほど大きいので、この辺りは感じ方の違いかもしれません。

 

3.-(1)  一般民事案件:即座に結論が分かるのが怖いところ

 

一般民事案件では、明確・即座に結論が分かります。多少連絡が遅れても、少々過程がずさんでも、最終的に全面勝訴をすれば文句を言われることは少ないと思われます。

ある意味では、「結果を出すから任せておけ」というのが一般民事案件における弁護士のスタンスだということかもしれません。

 

注意
もっとも、弁護士が懲戒請求される又はクレームをつけられる理由として、(認められるかはともかく)連絡遅れや横柄な態度が多いという事実は肝に銘じておく必要があります。

 

3.-(2)  企業法務案件:即座に結論は分からない

 

これに対し、企業法務案件では回答内容の成否は最後まで分からないことも少なくありませんし、直ちに結論が明らかになるケースは比較的少ないように思われます。

また、当初から負け筋事案なこともある一般民事案件と異なり、何らかのリスクヘッジやリカバリ―をできる場面も比較的多いでしょう。

もっとも、本当に何かミスをして最終的に爆発したときの重大性は非常に大きいものなので、その点のプレッシャーは少なくありません。

 

4.     顧客層

 

顧客層に関しては、一般民事案件と企業法務案件で評価は両面あり得ると思います。

 

4.-(1)  一般民事案件:様々な顧客層

 

一般民事案件はお客様の性格・人柄・考え方は様々です。強固な信頼関係を築ければ企業法務案件よりもやりやすい一方で、厄介なパーソナリティの依頼者は慎重な対応が必要となります。

 

ただ、一般民事案件は顧客層が悪いと考えている方がいればその点は否定できます。受任すべき案件とそうでない案件を峻別し、誠実に信頼関係を築ければ、むしろ企業法務案件よりも快適に仕事をすることができるしょう。

 

この点は事務所の経営状況にもよります。経営が苦しいため少々筋が悪い事件も受けざるを得ない場合は、一般民事案件は非常に客層が悪くなるリスクがあります。他方で、多数の依頼を受けて手一杯で案件を断るぐらいになれば、一般民事案件の方が客層が良いこともあり得ると思います(一生に一度のことをお願いされて引き受けることになるので)。

 

 

4.-(2)  企業法務案件:ドライな関係

 

企業法務案件は、顧客層はきちんとしたビジネスパーソンであるため安定する一方で、ドライでシビアな関係である点が特徴と言えます。とくに弁護士をシビアに評価している点は年々強まっているのではないでしょうか。

 

実力を認められれば素晴らしいビジネスパーソンから尊敬されて仕事をできる一方で、クライアントは弁護士をシビアに評価しているとの声を聞きます。

また、数多くの弁護士に仕事を発注する立場にあるクライアント(ファンドやFA)からすれば、率直に言えば法務サービスのみでは「弁護士は下請け」に過ぎない可能性もあると思います。この点を上回る付加価値をどうやって提供するかは常に意識する必要があるでしょう。

 

5.     報酬面

 

意外かもしれませんが、報酬面に関しては一般民事案件の方が優れているというのが一貫した私の意見です。もっとも、いくつか前提があり、時間単価ベースで評価したときであり、かつ経営者としての立場からの評価です。

 

もっとも、この点は向き不向きもあると思いますし、企業法務案件の中でもスター弁護士のような方と比べると足元に及ぶべくもありません。ただ、大手法律事務所の若手層の能力や勤務時間に比べると、一般民事案件で弁護士をやる方が報酬面のコストパフォーマンスでは優れているのではないかと思います。

 

MEMO(2019年1月24日追記)

この辺りは誤解を招きそうですので、個人的な感想とご理解ください。

企業法務系事務所のビジネスモデルは以下のように考えております。

  • 超優秀な弁護士を揃える→高待遇が必要
  • 時間単価で報酬を請求する→労働集約型

個人的に(各人の能力に頼らない)仕組み化×(時間と関係なく生じる)結果連動型報酬を選好する傾向がある点は割り引いてご判断ください。

 

6.     まとめ

 

今回は一般民事案件と企業法務案件の違いについて説明しました。

 

企業法務案件を取り扱うときは以下の点をとくに注意するようにしてください。

  • 概ね1時間以内には何らかのレスポンスをするよう心がける
  • リサーチ時には権威がある文献に必ず当たる

 

個人的には一般民事案件と企業法務案件に優劣をつけるつもりは全くありません。しかし、弁護士としてキャリアをスタートするときの働き方としては企業法務案件(むしろビジネスパーソン?)のスピード感を意識することは非常に重要だと思います。

おそらく、弁護士や訴訟進行のペースは、ビジネスパーソンからすると相当遅い!感じだと思うので、この点に最初から慣れるのは危険ではないでしょうか。

 

一般民事案件は、良い結果を獲得できたときの快感、相性の合う依頼者と出会えたときの喜び、報酬面などで様々な良い面もあります。一般民事案件と企業法務案件の違いを理解した上で案件に取り組むことが重要かと思います。

 

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