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採用担当弁護士から司法修習生へ送る就職活動のコツ(面接編)

前回の記事で司法修習生の就職活動における履歴書・志望理由書の書き方について解説しましたが、今回はその続きです。

(参考)司法修習生の就職活動(履歴書編)

 

私たちは、No.1弁護士事務所を目指して積極的な採用活動を行っており、就職活動中の司法修習生とお会いする機会が多くあります。

 

履歴書に基づく書類選考に通ったら採用選考は面接に進みます。私たちは、学歴・成績・年齢などは比較的緩やかに審査をしておりますが、面接は様々な観点から応募いただいた司法修習生を吟味しております。

(参考)私たちの選考フロー(書面審査は事務所理念や価値観に対する考え方についての論述問題で、カルチャーマッチするかを厳しく選抜するものです。)

 

履歴書記載の学歴・年齢等の形式的な面では人柄や性格が分かりませんが、実際に面接でお会いすると司法修習生の人柄・性格が良く分かります。

私たちは、人柄・性格重視の採用活動を行っているので面接内容は非常に重視しています。

 

本記事では、数多くの面接経験から、司法修習生が就職活動に成功するために面接時に気を付けた方が良いポイントを解説します。面接の評価は些細な点の積み重ねで決まります。

チェックポイントは少なくありませんが、つまらない点で減点されないように是非気を付けてみてください。

 

司法修習生の就職活動は売り手市場の傾向にありますが、売り手市場の意味は(成績とかではなく)良い人材を取り合っている点にあるかもしれません。

そして、良い人材とは、やる気・熱意があってコミュニケーションが取れる司法修習生になります。

 

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

 

1.     面接時の注意点①:身だしなみ

 

就職活動において面接時に身だしなみは重要と言われつつも、当たり前だと思っているのか又はそんな点で落とされるなら構わないと思っているのか、身だしなみを軽視している司法修習生は一定程度います。

 

私自身も司法修習生だったころは、身だしなみで判断されるのは気に食わないと思っていました。しかし、面接する立場になると、司法修習生の身だしなみは気になります。

 

1.-(1)  スーツの着こなし方

 

面接時はさすがにスーツを着る司法修習生がほとんどです。一般企業のリクルートでは画一的なスーツの着こなしが推奨されていますが、様々なバックボーンの方がいる司法修習生の面接は必ずしもリクルートスーツでなくても良いのではと思います。

 

判断基準は1つ「TPOをわきまえた着こなしを理解しているか。」です。面接時にどんな服装をするかは相対者への強烈なメッセージだと思います。

面接する私の方も年上の経験弁護士の方と大学院卒業直後の司法修習生の方だと、自ずと面接時の服装に対する考え方が異なります。

 

当然年上の経験弁護士に対する方が敬意を表す服装でないとまずいという意識が働きます。この点は人によって態度を変えるとは違うと思います。

 

1.-(2)  ひげや鼻毛

 

ひげに関してはお洒落だったら良いと思いますが、無精ひげを生やしたままは止めた方が良いでしょう。

どうしても面接の時間帯は司法修習後で夕方から夜間になるため、ひげが濃い人だと伸びることがあります。

やむを得ない面もあると思いますが、少しでも早く面接を設定するぐらいなら、ひげを剃る時間的余裕も考えて面接に臨む方がベターだと思います。

 

鼻毛に関しては人前にでる以上は意識した方が良いですよね…

 

1.-(3)  マナーに関して

 

面接官が入室したときは立つとか、基本的な名刺交換とかの挙動も司法修習生の就職活動では重要です。

マナーは素晴らしい/正確なマナーを身につけるというより、マナーで減点されないように注意してください。

 

MEMO

なお、面接で渡す名刺には、自分を覚えて貰える情報を記載することをおすすめします。

ほとんどの司法修習生(弁護士も)はシンプルな名刺のため記憶に残りません。できれば顔写真を載せた方が良いですが、そこまで行かなくても出身大学・ロースクールや趣味・特技を少し書いておくだけでも大きな効果があります。

 

2.     面接時の回答内容について

 

皆さんも気にされているのは、面接時に質問されたことに対して、どう答えるのが良いかだと思います。

いくつか重視するべき点があると考えていますので説明します。

 

2.-(1)  模範回答は存在しない

 

司法修習生に事務所の枠を押しつけるタイプの法律事務所は別かもしれませんが…

普通は、質問に対する模範回答があるというより、質問の意図を正確に理解しているかや回答を通じてその司法修習生の個性を確かめていると思います。

 

下記記事でも解説しましたが、個性を出すことは非常に重要だと思います。変なことを言うのを恐れて無難な回答をするよりは、少々踏み込んだことや独自の切り口から考えを伝えた司法修習生の方が評価高いと思います。

(参考)(参考)司法修習生の就職活動(履歴書編)

 

2.-(2)  コミュニケーション能力とは

 

少し前に「コミュ障」が流行りましたが、コミュニケーション能力って分かりづらいですよね。しかし、それでもコミュニケーション能力は非常に重要です。

端的に言えば、「司法修習生と面接官という関係を踏まえて話していて面白いか」です(要するに極めて主観的な面接官の評価)。

これも正直なところ司法修習生と事務所の相性かなと思うんですよね…

 

客観的な面で言うと司法修習生のコミュニケーションを測るポイントは質問に対して適切に回答できているかです。たまに、前提から話を始めたために着地した回答が質問とずれている司法修習生がいます。

そういう場合はコミュニケーション能力がないと思われてしまいます。質問の趣旨や意図を把握して端的に回答した後に理由を話すのはテクニックとして重要かと思います。

 

2.-(3)  面接官も意味不明な質問をするときがある

 

ちなみに、面接官が意味不明な質問をするときもあるので注意が必要です。あと、面接官がそもそもコミュニケーション能力が低いときとか…笑

疲れていると訳わからないことを聞いているなと思うときも正直あります。質問の趣旨や意図が分からないときは司法修習生の対処方法として2つのパターンがあります。

 

面接官に意図を聞く

効果的にやると逆に優秀な人だなと思われる一方で(面接官としても助けられたと思う)、何度も質問されるとマイナス評価を受けるリスクがあります。

 

前提を置いて回答する

弁護士になってからも使えるテクニックですが、質問の趣旨を限定したり、質問の前提を置いて回答する方法ですね。

Aという質問ですが、Bという前提で考えると、Cだと思いますというパターンですね。使える範囲は幅広いので覚えておかれると良いと思います。

 

2.-(4)  当事務所で頻出の質問と意図について

 

ちなみに当事務所の面接でよく聞く質問事項は以下の通りです。もし当事務所に興味がある司法修習生は是非参考にしてください。

 

質問事項 趣旨・意図
募集要項や事前説明の感想 今後の改善をしたい。率直に意見を述べてくれると素直で優しい人だなと思います笑
弁護士としてどう成長したいか 回答によって個性が出やすいので
当事務所を志望した理由 今後の改善をしたい

正確に当事務所を理解しているか確認

入所後のミスマッチがないかを確認

事務所選びで重視していること 当事務所に入所してミスマッチがないかを確かめる意図
現在の採用活動状況 内定辞退の可能性があるか、いつ頃に決断するのかを確認したい
仕事に対する価値観・考え方 仕事(アルバイトを含む。)に対する考え方や責任感の意識を確認したい
支店長希望の有無 転勤したくないからと言ってマイナス評価にはしませんが、転勤もできるなら希望地の支店展開を考えたい。

 

 

3.     面接後の質問事項について

 

就職活動の面接は、基本的に事務所側の説明、事務所からの質問とこれへの回答がメインと思われがちです。

しかし、司法修習生の実力差・地頭の良さが明瞭に分かるのが質問事項だと思います。「何か質問がありますか?」と言われた後の対応は面接のクライマックスと言って良いかと思います。

 

質問はこれまでの流れもあるので、沢山すれば良いとか、どんなことを聞けば良いかは臨機応変に対応する必要があります。

抽象的には「従前のやり取りで話題にならなかった内容を補足しつつ、本気で入所・入社したいことが伝わる真剣度の高い質問」になりますが、具体的な内容を説明するのは難しいです…笑

 

そこで、ここでは逆に司法修習生が失敗しがちなパターンを説明します。

 

3.-(1)  回答内容と質問事項を用意して手一杯にならない

 

事前準備を頑張るのは良いことですが、それに振り回されると「能力が低い」と思われるリスクがあります。

 

回答内容で手一杯なとき

まず、一番ダメなのは面接時の質問を予想して、回答を考えて終わりという司法修習生ですね。用意してきた回答をすらすら答えて満足気な方もいますが…

  • 戦略ミス:回答内容は重要ではないので力を入れる点が間違っている
  • 質問とずれても用意してきた回答に引き寄せて適切な回答にならないリスク
  • 適切な質問んがないと志望度が低いと思われる点

 

質問事項で手一杯なとき

他方で、質問事項を考えるのは良いと思いますが、細かく質問事項をメモ帳に書いて

手元に置きながら質問するのもどうですかね。

「頑張って考えてくれている」というプラス評価な印象と、やや神経質・能力に欠けるとマイナスに思う人もいると思います。

 

マイナス面に関しては補足が必要だと思いますが、質問事項を書いたメモ帳を広げて面接官の前で話題に出た質問内容をチェックしながら質問をしてくる人がいます(悪いイメージが湧きにくいですかね?)。

そういう作業は頭の中でやる方がスマートですし、多少聞き忘れても良くないですか? 入所前に100%クリアにならないと意思決定できないことに対するネガティブな意見を聞いたこともありますし…

まあでも、この辺りは人によって感じ方も違いそうですかね~

 

3.-(2)  回答が分かり切っている質問

 

この観点は様々あると思いますが、就職活動の場では司法修習生に対して面接官はある範囲では良いように言うしかないですよね。あと、遠い将来に関することは「分からない」としか回答しようがないと思います。

まあ、この辺りの機微が分からない質問は少々不躾な印象を与えると思います。

 

注意

質問をするときは入所を前提とした具体的・前向きな質問内容をするのが良いと思います。

 

3.-(3)  積極的に働く意欲がなさそうな質問

 

積極的・主体的に働く司法修習生の方がやっぱり評価が高いので、受け身・消極的な印象を受ける質問をされるとマイナス評価になります。

でも、この辺りは事務所のカラーによっても異なるのかもしれません。

 

4.     その他

 

4.-(1)  面接の回数は?

 

事務所によっても異なりますが一般的に2~3回は司法修習生をお呼びすることになるかと思います。当事務所では1~2回の面接で内定を出すかを判断します。

当該司法修習生の他事務所の選考状況もあると思うので、内定を出した場合に受諾できる旨の連絡をいただいた後に内定を出させていただきます。

 

なお、内定受諾にあたって他弁護士からも話を聞きたいと司法修習生側からリクエストがあれば歓迎いたします。とくに若手弁護士と話したいという司法修習生も少なくないようです。

慎重に就職活動を行いたい司法修習生の気持ちは分かりますので、このようなリクエストについては歓迎させていただきます。

 

4.-(2)  採用/不採用の連絡について

 

率直に言って不採用の連絡について抜け漏れが生じることがあります。また、選考結果の通知まで時間を要することがあります。

 

これは司法修習生の採用活動は、弁護士が本来的業務の傍らに行っているので多忙で忘れがちであること、及び絶対的評価ではなく他司法修習生との兼ね合いがあることです。

 

選考が進む場合は少なくとも1~2週間以内に連絡があると思います。不採用の連絡は業務として優先度が後回しになりがちですが、概ね2週間を経過しても連絡がなけばご理解ください。

 

MEMO

採用/不採用の連絡や事務フローは課題だなと感じています。引き続き改善を行っていきたい点ですね。

 

4.-(3)  面接後のお礼について

 

上記の通り司法修習生の採用活動は他業務の傍らに行っています。面接時は色々考えますが、面接が終わったら緊張が解けて他のことに気が向くことも少なくありません。

とくに司法修習生との面接直後に判断に迷ったときは判断を保留し、そのままになることもあります。

 

このような場合に司法修習生側からお礼のメールがなされると、リマインドになりますし、判断に迷ったときの最後の一押しになることもあります。面接で志望度が高まった場合はお礼メールを送るのは有効な手段だと思います。

 

5.     まとめ

 

本記事では司法修習生が就職活動で面接をするときの注意点を解説しました。やや、~してはいけないというNG事項が多くなりましたが、基本的にはクリアできている司法修習生が大半だと思います。

 

最近は就職活動は売り手市場であり、問題ない司法修習生であれば内定が出ると思います。当事務所も、就職活動のコツを説明していますが、本当は採用活動のコツを教えて欲しいぐらいです…笑

 

当事務所が不採用にしたときでも、能力面に問題があるというより、相性面に問題があるからの可能性があります。

売り手市場とは言え、相性が合うか否か、とくに無理して採用して相性が合わずに短期離職に繋がらないかは慎重に検討しています。

 

相性が合わない場合はもちろん、あまり個性が分からずに相性が合うか判断に迷うときは他候補者との兼ね合いで不採用になることもあります。

従って、無難な受け答えをするよりは、率直に人柄や個性を出した方が良い就職活動になると考えています。

 

もし、就職活動の上手くいかないと感じたことがあれば、すごく基礎的・当たり前の内容かもしれませんが、本記事が就職活動の過程を見直していただく参考になりましたら幸いです。