> アイシア法律事務所の弁護士求人情報へ

営業初心者の士業が知っておくべきマーケティングとセールスの違いを5分で解説

弁護士も競争激化により営業をするべきと言われることが増えてきました。士業の営業セミナーやWEB集客セミナーは数多くの方が参加しており、士業と営業は関心を持っている方が多いテーマだなと感じています。

 

もっとも「営業」と一口に言っても様々なプロセスが含まれています。今回は、私が営業を考えるときに重要だと考えている「マーケティング」と「セールス」のプロセスの違いを解説したいと思います。

 

既に営業や集客に詳しい方にとっては当たり前のことかもしれまえんが、これから営業を頑張ろう、どんなことをするべきかと悩まれている営業初心者の方のために分かり易くご説明します。

 

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

 

1.     営業のプロセスはマーケティングとセールス

 

1.-(1)  マーケティングとセールスとは

 

営業のプロセスはマーケティングとセールスに大きく分けることができます。

マーケティング

多数の潜在的な顧客候補に対してアプローチを行い、提供する商品・サービスについて問い合わせを獲得する活動

セールス

問い合わせをした見込み顧客に対して、商品・サービスを販売する活動

 

1.-(2)  営業プロセスを分解する目的

 

営業プロセスをマーケティングとセールスに分解する目的は営業効率を改善するためです。

 

例えば、案件を十分受任できていないときに、そもそも問い合わせ数が少ないのか(マーケティングに問題あり)、それとも受任率が低いのか(セールスに問題あり)を分析することができます。

 

また、セールスは一般的に自動化することが難しいです。しかし、マーケティングは比較的自動化することが可能です。

マーケティングとセールスを分解する目的としては、マーケティングプロセスをできるだけ自動化し、人手がかかるセールスの負担を軽減しようという文脈で使われることもあります。

 

もう一歩踏み込むと、士業にとって「マーケティング」と「セールス」のどちらに適正があるかを把握しておくことは有益だと思います

おそらく相談者と雑談をしたり相談者の悩みに共感性が高い方はセールスが得意であり、研究をしたり・執筆をしたりすることが好きな方はマーケティングが得意なのではないかと思います。

 

1.-(3)  マーケティングとセールスは掛け算

 

営業の成果(案件受任数)は、以下の数式の通りマーケティングとセールスの成果を掛けて表すことができると思います。

営業の成果
案件受任数=マーケティング結果(件数)×セールス力(%)

 

ここで指摘したいのは、マーケティングは件数で表しており、セールス力は%で表している点です。セールス力をどれだけ改善しても(1件の相談から複数案件受任する例外的な場合を除いて)100%を超えることはないのに対し、マーケティングの方は理論上どこまでも伸ばせることができます。

 

逆に言えば、法律相談に来たら百発百中で受任できるスキルを持っていたとしても、そもそも法律相談や問い合わせがなければ意味がないことになります。

経験豊富なベテランの士業で食えない・廃業するという話が出るのは、セールスに問題があるのではなく、マーケティングに改善の余地があるのではないかというのが本記事の仮説です。

 

2.     どのようなマーケティングがあり得るのか

 

セールスは、皆さんにとって日々の法律相談において相談者が抱える悩みに対して適切な解決案を提示して受任をすることであり、私が改めて言う必要はありません。そこで、マーケティングについてもう少し掘り下げたいと思います。

 

2.-(1)  マーケティングの定義(再考)

 

前述の通りマーケティングの定義は、多数の潜在的な顧客に対してアプローチをして、提供する商品・サービスについて問い合わせを獲得する活動です。

  • 対象は多数の潜在顧客
  • 目的は問合せを獲得する

 

そのため、どのようなマーケティング手法があり得るかは、潜在的な顧客に対してどのようなアプローチをすれば良いかという質問とほぼ等しくなります。

さらに言えば貴社の「潜在的な顧客」がどこに居て、どのような行動パターンを持っているかも重要になるでしょう。「潜在的な顧客」は案件内容毎に異なるため、ある案件分野で成功したマーケティング手法が他の案件分野にも妥当するとは限らないので注意が必要です。

具体的に言えば、WEBマーケティングで交通事故被害の案件を集客できても、高齢者がターゲットとなる相続案件はWEBマーケティングよりは新聞折り込みの方が向いているなどです。

 

2.-(2)  一般的なマーケティング手法

 

 

士業がマーケティング活動を行う場合の一般的なマーケティング手法は以下の通りです。

 

紹介営業

士業の営業活動と言えば紹介が一般的だと思います。紹介営業とも言われますが、これはマーケティング手法の一種であり、いわゆる「リファーラル・マーケティング」と呼ぶのが正しいように思われます。

紹介営業のメリットは、費用がかからないことと(一般的に言われてるのは)質の高い問い合わせを得られることでしょうか。あと、紹介営業は上品なイメージがある点もメリットかもしれません。

 

広告・折込みチラシ

マーケティング業界では広告・折込みチラシは古典的な手法でしょう。とくに昔の「セールス・ライター」関連の書籍を読んでいると、この分野で様々なスキルが蓄積されているんだなと感じます。

広告・折込みチラシのメリットは、現時点で困っているわけでない方にアプローチできることでしょうか。あと、ネットを使わない世代・地域の方に大量にアプローチができるメリットもあります。

 

WEB集客

士業もホームページによりWEB集客することが一般的になってきました。WEB集客は、私が最も得意とするところであり、WEB集客の中にも様々な手法が含まれています。

WEB集客のメリットは、コストパフォーマンスが極めて高いこと、比較的低予算からスタートできること、即効性があることなどです。士業の中にはWEB集客を毛嫌いする人もいますが、合理性の観点からはWEB集客をマーケティング手法から除外する意味はないと思います。

他方で、以下のようなショッキングな事実もあります。つまり、単にホームページを作っただけで依頼を獲得できるわけではありません。WEB集客をやるからには、しっかりと戦略を持って取り組む必要があります。

ホームページで販売客数が大幅に増加したのは小規模事業者のたった3.7%

by 中小企業白書2014年版

WEB集客については下記記事で詳しく解説しています。

(参考)弁護士のWEB集客 4つの方法【WEBマーケティング初心者必見】

 

3.     マーケティングを成功させるコツ

マーケティング手法ごとに特徴やメリットが異なりますが、マーケティング全般に共通するコツを考えたいと思います。

 

3.-(1)  ターゲットを絞る

 

言われ古されていることだと思いますが、マーケティングではターゲットを絞ることが重要です。マーケティングは多数人にアプローチすることを定義としますが、多数の中のたった一人にアプローチをすることが成功するコツです。

 

正直この点は何度も言われておりますが、私も十分に意識できていない点だなと思います。例えば、本ブログ記事をマーケティングの手法で考えれば、私はざっくり「営業に興味がある士業」ぐらいを対象に考えていますが、これでは全然駄目です。

 

ターゲットを絞るとは以下ぐらいまで詳しくペルソナを決めることが重要です(※実在の人物をモデルにしているわけではありません笑)。

  • 36歳/男性(横浜市在住)
  • 家族構成:妻と3歳になる子ども
  • 職業:弁護士4年目で、弁護士10名程度の弁護士事務所(虎ノ門)において勤務弁護士として働いている。
  • 悩み:事務所の経営状況が芳しくなく昇給に不満があるため独立しようかと考えている。
  • 休みの過ごし方:子どもが可愛い盛りであり、休みの日は専ら自宅近くの公園で子どもと遊んでいる。

 

ターゲットを絞ることの重要性は色々なところで言われており、ものすごく奥が深いと思いますが、ここでは「ターゲットを絞る」ことがとにかく重要であることだけ指摘します。

 

3.-(2)  目標を考える

 

マーケティングの成果を考えるときには明確な目標を定めることが重要です。質の高い問い合わせを多数獲得することが目的ですが、これは以下の2つの観点から考えることができます。

多数の問い合わせを獲得したいのか

質の高い問い合わせを獲得したいのか

 

この目標を考える意味は、自分が持つセールスのリソースがどれぐらいあるかに関連するからです。セールスパワーが強ければとにかく多数の問い合わせを獲得してセールスに任せることができますが、セールスが弱ければ質の高い問い合わせを獲得する必要があります。

 

一般的に弁護士事務所のセールスは弁護士が法律相談という形で行い、弁護士をふんだんに抱える弁護士事務所はそう多くないので、質の高い問い合わせを獲得することが重要になると思います。

 

3.-(3)  予算を考える

 

最後にマーケティングを成功させるコツは予算を真剣に考えることだと思います。

 

単純に充分予算がないと取り得ないマーケティング戦略もあります。あえてラジオ広告・テレビ広告をマーケティング手法から外しているのは予算的に現実性がないことがほとんどだと思われるからです。

 

もう1つ指摘するべきことは、マーケティングを行う場合はそれなりに予算が必要だということです。たしかに予算がなくても紹介営業というマーケティング手法を取ることはできますが、マーケティングを成功させるならそのような消極的な姿勢はどうかなと思います。

紹介営業を悪いと言っているのではありません。紹介営業が最も向いている案件を獲得したいから紹介営業に力を入れるのは良いと思いますが、予算がないからという理由であれば問題ではないかと思います。

 

マーケティングを行うことは最初にそれなりのお金が出ていくことです。場合によっては投下した宣伝広告費を取り返すことができないときもあります。そのような不確実な状況で勇気をもってマーケティングに取り組むことが成功のコツではないかと思います。

 

4.     まとめ

今回はマーケティングとセールスの違いやマーケティングを成功させるコツについて普段考えていることを記事にしました。士業が営業を強化するときは、マーケティングを改善する必要があることが多いかと思います。

マーケティングは様々な手法がありますが、どんな案件分野やどのようなターゲット層にサービスを提供していくかによってマーケティング手法を使い分ける必要があると思います。

この記事が営業初心者の士業の皆様にお役に立ちましたら幸いです。