弁護士のWEB集客も一般的になってきました。
これから弁護士になる方にとってもWEB集客のメリット・デメリットは気になる点だと思います。
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業
1. 弁護士によるWEB集客の真実を語ります
就職活動中の司法修習生の中には弁護士のWEB集客にこんな不安を持つ方も少なくないようです。
「WEB経由の法律相談は筋悪の事件が多いのでは?」
「無料法律相談だけで終わって受任できないのでは?」
本記事では独立してから弁護士のWEB集客について試行錯誤を繰り返してきた経験から、弁護士のWEB集客のメリット・デメリットや注意点を徹底検証しました。なお、弁護士がWEB集客する方法について下記の記事を参考にしてください。
1.-(1) はじめに:WEB集客以外の受任経路
まずWEB集客ではない弁護士の受任経路としては以下のようなものがあります。
- 知人からの紹介
- 弁護士会の法律相談
- 弁護士からの紹介
しかし、弁護士の集客方法と比べられることが多いのは知人からの紹介だと思われるので、本記事はWEB集客は紹介と比べて客層が悪いのかを考えたいと思います。
1.-(2) 本記事の結論:WEB集客=質が悪いは間違い
結論としては、WEB集客と紹介では案件に以下のような違いがあると思います。
- WEB集客でも十分な受任率が見込める
- 電話の問い合わせ段階ではWEB集客の方が質が悪い可能性が高い
- WEB集客は紹介と比べて断るのが簡単なため最終的な客層は悪くない
以下では紹介と比べたときのWEB集客案件のメリット・デメリットを項目ごとに解説します。
しかし、結論的には方法を間違えなければ「WEB集客=質が悪い」は間違いです。
(参考)「ネット集客は質が悪い」という話を聞くけど,そんなことない。
「ネット集客は質が悪い」という話を聞くけど,そんなことない。
HPやポータルでも人柄や経験や強みなんかを明確にしないとマッチする相談者は来ないのは当然。
つまりネット上の自分の見せ方を改善すれば,相談の質は上がる。
ネットは楽して集客できると謳う人に限ってそういうことを言う傾向。— 弁護士中間隼人@こたべん (@nakahaya0427) February 23, 2019
2. WEB集客の受任率は?
WEB集客は紹介と比べて法律相談数に対して受任できる案件が少ないと思っておられるかもしれません。
たしかに、紹介であれば最初から紹介者の信用によって信頼できる弁護士としてティーアップがされています。他方で、WEB集客では複数の弁護士を比較検討している相談者がいるのも事実であり、依頼することを前提に弁護士に相談しているわけではありません。
2.-(1) 私たちがWEB集客した場合の受任率は40%
しかし、私たちは受任率=受任件数÷法律相談数を測定していますが、WEB集客であっても受任率は約40%程度を維持しています。
概ね法律相談に来られた方の2人に1人弱は依頼される確率です。
どうでしょうか? 思ったよりWEB集客でも受任できると思われるか、やっぱりWEB集客は受任率が低いと思われるか弁護士によって意見が分かれるかもしれません。
2.-(2) 弁護士によって受任率をどう評価するかは変わる
ここがまさしくポイントで、受任率は弁護士の力量によるので、著しく受任率が低いわけでなければWEB集客だから悪いということにはならないと考えています。
弁護士として経験を経て、人脈の質が高くなるについて受任率も向上することを考えれば、比較的若い弁護士が多い私たちがWEB集客で受任率40%程度というのはWEB集客の有効性を示していると思います。
3. WEB集客の失敗談:問い合わせ段階のクオリティ
WEB集客のデメリットというか私の失敗談ですが、WEB集客は諸刃の剣なところがあります。WEB集客の失敗というと費用をかけたのに問い合わせがないことはあるあるですが、私の場合は逆に「問い合わせが来すぎる」というWEB集客の失敗を経験しました…笑
3.-(1) WEB集客の失敗談
「問合せが一杯来るならええんちゃう?」と思われるかもしれません。しかし、弁護士の仕事って法律相談や問い合わせの対象は多数ありますが、受任対象になるメリットのある法律相談は限られます。
例えば、下記のような問合せが頻繁にかかってくることを考えてください(架空の問い合わせ例です。)。
- 飲み会の帰りに立ち小便をしたが逮捕されますか?
- ネットオークションで100円のものを買ったが品物が送られてきません
- 家の中にいても誰かに見張られていて、頭に直接警告が来るんです。助けてください。
このように、WEB集客に成功しすぎると、受任に繋がらない問合せが増えて対応負担が増えるというデメリットがあります。
もっとも、この点は現実的にはさほどデメリットではないかと思っています。WEB集客における「過去の」失敗談と言えます。
この点は弁護士×WEBマーケティングに取り組んでいるからこその知見です。
WEBマーケティングを専門としている方は、PV数を増やせば良いと考える傾向にあると感じます。(PV数の罠)。一部の弁護士ポータルサイトはPV数の罠によって弁護士からの評判を落としているようなのでご注意ください。
WEB業界を考えると基本的に「質より量」が価値観にならざるを得ないと思う
なぜなら、WEBだとPVがあって損することはないのに対し、PV数があれば必ずマネタイズはできるからしかし、弁護士事務所のWEB集客は明確に「量より質」なんですよね…
これが弁護士のWEBマーケティングが難しい構造的要因— Ginza library-弁護士坂尾陽公式ブログ- (@GinzaLibrary) September 14, 2019
3.-(2) 質の悪い問合せの対応策
それでは質の悪い問い合わせがWEB経由で来たときにどう対応すれば良いでしょうか?
答えは…
質の悪い問い合わせが来るページから問い合わせができないようにする
でした!すごく単純ですよね…笑
もっとラジカルにやるならページ自体を削除することも考えられます。WEB集客だとかなり正確に分析ができるので、質が悪いなと感じればその部分を削除することも容易です。
WEB集客はたしかに一歩間違うと質の悪い問い合わせが大量に来ます。
しかし、きちんと対策を行うとともに、質の悪い問い合わせはそもそも法律相談外であることを告げてお断りすれば、WEB集客だからこそのかなり洗練された受任フローを確立できるのではないかと思っています。
4. WEB集客は断りやすい
4.-(1) WEB集客は筋悪な事件ばかり受任する?
WEB集客している弁護士事務所は筋の悪い事件ばかり抱えていると誤解されている方もいますが、この点は少なくとも私たちの事務所だと明確にNoです。
もっとも、私たちは案件受任が各弁護士の自由な裁量で判断できるためかもしれません。
※受任ノルマとかがある弁護士事務所だと筋悪でも受任せざるを得ない可能性があります。
4.-(2) ポイントは断ることができる点
紹介だと紹介者の顔を立てて接してくれますし、紹介者としても弁護士に相談すべき内容かスクリーニングしてくれます。
その意味でWEB集客では、紹介経由と異なりびっくりするほど質の悪い問合せがあることは否定しません。
しかし、WEB集客のポイントは「断りやすい」ことです。
いくらWEB集客でも事務所にいきなり押しかけて法律相談する方はいません。まずはメールや電話で問い合わせがあります。
そして、筋の悪い問い合わせか否かは電話して15秒あれば気付きます…笑
弁護士には応召義務のような受任する義務がないので、すぐに断れば良いだけの話です。
問合せの筋が悪くても、断れば最終的には筋が悪い事件は受任せずに済みます。
むしろ、WEB経由だと問合せ数が圧倒的に多いので、むしろ多数の問合せの中から厳選して受任するので受任案件の質で言えばむしろ高いと思います(その分断る負担はあります。)。
4.-(3) 知人からの紹介は断りにくい
逆に、私自身は知人からの紹介は断りにくいデメリットがあると思います。
知人から紹介されると、とりあえず話を聞く必要がありますし、断るときは報告しなければなりませんし、時間の無駄だけだった法律相談でも知人に恩を売られるなどのデメリットもあります。
紹介が貰えるように「気軽に相談できる弁護士」はすごく大事なことだと思いますが、一歩間違うと法律系クイズ番組のような弁護士になりかねません。
例えば、LINEやメッセンジャーで、「~って法律的にどうなの?」や「少し法律問題に困っている経営者がいるから繋いで良い?」と聞かれることがありましたが、真摯・丁寧に対応してもあまり有益な結果に繋がることはなかったです。
弁護士には応召義務がないため建前としては断る選択肢があります。しかし、紹介案件だと断ることが事実上難しいというデメリットがあります。弁護士経験が長くなると「断っても良い」ことが非常に心強く感じるはずです。紹介案件では「断る」という選択肢が奪われることは注意すべき事実だと思います。
もっとも、若手弁護士の中には断ることに不安を覚える方もいるかもしれません。法律相談で断ると営業活動に悪影響がでないかについては一連のツイートを参考にしてください。
弁護士の営業戦略
若手弁護士の頃は「弁護士は何でも答えられるでしょ?」と色々聞かれ、それに答えられないのは恥ずかしいしお客さんがつかないと思ってました
でも、いつの頃からか「分かりません」と回答しても良いことに気付いて気持ちが楽になりました
— 弁護士×就活Blog -Ginza library- (@GinzaLibrary) September 14, 2019
4.-(4) 質の高い紹介を得る方法
他方で、長年開業されている税理士や司法書士の先生で、「四大法律事務所出身でM&Aに詳しい弁護士」と認識いただいている方からのご紹介は非常にありがたいものばかりでした。
ただ、これは紹介者のレベルがかなり問われるんですよね。四大法律事務所=何となく凄そうではなく、本当の意味で四大法律事務所のブランド力を認識している方とお付き合いしてご紹介いただく必要があります。
どうすれば質の高い紹介を得られるのかは別記事で考察してみたいと思います。
5. まとめ
弁護士のWEB集客は有効なのか?、WEB集客している弁護士事務所は筋悪の案件が多いのでは?といった疑問に少しでもお答えできればと思います。
弁護士のWEB集客に関しては、私が長年研究を重ねている分野であり、かなりのノウハウがあります(ちなみに弁護士以外のプライベートなWEB集客もノウハウがある分野もあります…笑)。
今後もWEB集客に関して記事を更新できればと思います。
もし、WEB集客を考えている弁護士事務所や、独立しようと思ってWEB集客に興味がある弁護士がおられましたら気軽にご相談ください。